ミステリオ - MSTERIO.jp

View Original

2007 NYマラソン物語



11月4日、日曜日、快晴。朝10時、4万人近くのランナーたちが世界各国からここニューヨークに大集合してフルマラソンが開催されました。日本人のランナーは今年402名。男子優勝タイムは2時間9分4秒、2位とはたった12秒差。女子優勝タイムは2時間23分9秒、2位との差は23秒。一位を獲得したイギリス出身の女子ランナーPaula Radcliffe 選手はこの1月に女の子を出産したばかり。また、車椅子の一位は男子1時間33分58秒、女子は1時間52分38秒でした。

そして、ミステリオの3人も無事完走することができました。聖一郎選手は途中足がつってしまう、という思わぬハプニングも克服しての完走。ジョッシュとのぞみ選手はスタートからフィニッシュまで一緒にゴールイン!そのほんの数分前にはTom Crise (トムクルーズ)の奥さまKatie Holmes さんもゴールイン(当日彼女はKatie Smith と名前を変えて出場)。日本全国をまわりながら”決してあきらめない”というメッセージを伝えるべく講演活動をしていらっしゃる、両足義足の沖縄出身の島袋さんも完走されました。

マラソン前日には、中国オリンピックの出場決定を決めるアメリカ国内選手権大会のフルマラソンレースがセントラルパークで開催され、130名のエリートランナーたちの中から上位4位を選出。たった2時間ちょっとで走りきる選手たちを応援する人たちの渦で、マラソン気分も絶好調。そんな中、28才の男子選手Ryan Shay が5マイル地点(8キロくらい)で心臓発作を起し急死する、というとても悲しい出来ごともありました。亡くなった選手とオリンピックアメリカ代表に決まった一位のRyan Hall選手とは大親友だったとのこと。亡くなった友人の分まで自分の命をはっても、オリンピックで頑張るんだとRyan Hallは涙を流して語っていました。

ニューヨークマラソンは、応援の数、そしてその声援の素晴らしさでも世界1だと言われています。東京マラソンは交通事情から折り返し地点が2カ所ありますが、ニューヨークは、いわゆるニューヨークと言われる5カ所の全地域をまんべんなく走るかなりハードなコースになっています。

スタートは、STATENISLANDから。そこから橋を渡ってBROOKLYN へ。ブルックリンでは、住宅街の道の両側に、数数えきえないほどのロック、デイスコ、ラテン、教会音楽などの生バンド演奏を聞きながら走り続けたあとQUEENSへ。クイーンズから、いよいよマンハッタンへと向かいます。ただそこでランナーにとって、とてもきつい地点の一つと言われている、QUEENS Bridge (クイーンズ橋)をぬけなければいけません。なぜつらいかというと、この橋は半端でなく上がりの坂になっているのです。必ず救急車が何台も待機しているくらいに厳しいコース。ここで体力を使いきると後半がもたない、と言われる過酷の橋。ただ今年は去年とちょっと様子が違いました。橋に入る直前になんと”はちまき”をつけた威勢のよい日本人10名くらいの方たちが、力をふりしぼって和太鼓を演奏していたのです。よーく見ると、なんとそのうちの一人が、のぞみ選手の小中高時代の先輩だったのです。思わずきゃ〜〜〜〜と抱き合って元気をもらいました。

でもやっぱり橋に入り始めると、急に暗くなり、まるで真っ暗闇のトンネルのように気分までめいります。すると、橋の後半トンネルを抜けるその出口近くに明るい日差しが差しかかるかのように降りきった瞬間、太陽の明るい光と応援の声の渦が聞こえてきます。思わず背筋がぞくぞくっとするくらい大きな声援に、どんなにつらくても、”やっと着いたぞマンハッタン、あとちょっとだ、がんばるぞ!っと元気が急にわいてきます。

そこから一気に広い通り(ファーストアベニュー)を走りつづけ、35キロ地点に行くか行かないか、そろそろ体力がつきてしまう、と感じ始める108丁目あたりで、大きな日本の旗が見えてきます。これは今年ミステリオに参加してくれたスタッフのすみえさんが、ここ10年以上に渡り、同じ場所で毎年日本の旗と大きな日本語の字で”がんばれ”というサイン立てて、応援してくださっているのです。
日本人であれば誰も気がつくこのサイン、たくさんの人たちがここを通過して勇気付けられます。

そしてこのサインを通過しBRONXを抜け、いよいよセントラルパ−クを目指して最後のふんばり。もうここまできたら、後は体力よりも気力だけ。応援の数も最後だけあって一段とパワーアップ。ずっとパークを走ってゴールかと思いきや、一端パークを出て沿道を走り、しばらくすると、またセントラルパークに入るその入り口には、巨大なスクリーンが配置され、そのスクリーンに自分の姿が大きく映し出される映像を横目でちらりと確認して、いよいよゴールまで最後の500メートル。そこでまたもや最後の坂が待ち受けています。
そして坂をあがりつめたところに、ありました、ゴール!!!! 4万人近いランナーたちは、ここできっとみんな涙を流すはず、そののくらい感動的なフィニッシュとなります。ゴールは24時間あいているので、何時間かかってゴールインしたとしても、全員に必ずメダルが渡されます。

最後に、二つの実際に見た、わあ〜〜〜すごい、というエピソードをご紹介しましょう。
ダントツ一位:最後ゴールを目指して一人の男子ランナーが走ってきた、彼がゴールを踏んだ瞬間、ガクリと両ひざが立たなくなり地面によろよろと倒れてしまう。その場にかけより、"Are you OK?(大丈夫?)" と駆け寄る一人の彼女。彼をやさしく抱きかかえ、様子をうかがうその瞬間、倒れたはずのそのランナーが急にひざまずいた、と同時にポケットから箱を取り出し、中に入っていた婚約指輪を彼女に手渡し、”Will you marry me? (結婚してほしい?)”とプロポーズ。感動で一緒に泣き崩れる女性、”Of couse? (もちろんよ!)”と答える女性に、声援していた観衆から拍手の渦と涙。

第二位:50代初め脳血栓(のうけっせん)になり、両足以外の体ほとんどが麻痺し、口もきけないBill という男性。車いすに乗って、セントラルパークでトレーニングをしている姿を時々見かけるのだが、実はBillは体が麻痺していて前に進むことができない、手で車いすの車輪をまわすこともできない、その代わりに背中を進行方向に向けて、自分の足で車いすを押しながらフルマラソンにここ数年出場している。そんな彼を応援する人たちの数は年々どんどん増えていく。今年ゴール近くでは、ものすごい数の一般の人たちが、最後は自分達もコースに出て、Billをひたすら勇気付ける。そして大きな声で応援しながら彼をゴールへと導く、”GO BILL, YOU CAN DO IT". と。

まだまだ紹介したい感動の出来事はた〜くさんあります、そのくらいこのマラソンは感動的ないろいろな人間ドラマに出逢うことができるレースです。走る人、応援する人、ボランテイアースタッフたち、このイベントに関わるすべての人たち、そして世界中からエールを送ってくれる人たちみんなが一つになれる日。この日は”走る”ことによって元気をもらう日、勇気を与え合う日、そして、この日こそが自分の為だけでない様々なMake A Difference を、一人一人が発揮できるエキサイテイングな日に変わる、それがニューヨークマラソンのすばらしさだと。